業務委託と雇用の線引き — 「偽装請負」と判断されないために
契約書の表題が業務委託でも、実態が雇用なら労働者として扱われます。判断基準と、発注側が守るべきルールを整理します。
契約書の名前では決まらない
「業務委託契約書」という表題であっても、実態が指揮命令下の労働であれば、労働基準法上の労働者と判断されます。そうなると、未払い残業代、社会保険料の遡及徴収、解雇規制の適用といった問題が一度に発生します。
労働者性の判断要素
行政・裁判所は、次のような要素を総合して判断します。
- 仕事の依頼を断る自由があるか … 断れないなら労働者性が強い
- 業務の遂行方法に具体的な指揮命令があるか … 手順まで細かく指示しているなら労働者性が強い
- 勤務時間・場所が拘束されているか … 始業終業が決まっている、常駐が必須なら労働者性が強い
- 本人以外が代わりに行えるか … 代替不可なら労働者性が強い
- 報酬が時間に対して支払われているか … 成果ではなく時間給なら労働者性が強い
- 機材・材料をどちらが負担しているか
- 他社の仕事を受けられるか … 専属を求めるなら労働者性が強い
「週 5 日、9 時から 18 時まで自社オフィスに常駐し、日々の作業指示を受ける」という形は、契約書が何であれ雇用と判断されるリスクが高いです。
発注側が守るべきルール
業務委託として適法に進めるなら、次を整えます。
- 成果物または業務範囲を契約書で明確にする
- 作業時間や場所の指定は、業務の性質上必要な範囲にとどめる
- 報酬は成果や業務量に対して設定する
- 他社の業務を受けることを禁止しない
- 朝礼への参加、勤怠管理システムでの打刻など、従業員と同じ運用を求めない
フリーランス新法への対応
2024 年 11 月に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、従業員を使用しない個人などに業務委託する発注事業者には、次の義務があります。
- 取引条件の明示 … 業務内容、報酬額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する
- 報酬の支払期日 … 給付を受領した日から60 日以内のできる限り短い期間内に定め、支払う
- 禁止行為 … 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入強制など(一定期間以上の継続的な委託の場合)
- 募集情報の的確表示、育児介護等への配慮、ハラスメント対策の体制整備
発注側が個人事業主や小規模な会社であっても、対象になります。外注を使い始めた時点で、発注書のフォーマットを整えておくのが実務的な対応です。
下請法(取適法)との関係
発注側の資本金規模と取引内容によっては、下請代金支払遅延等防止法の適用も受けます。同法は 2026 年 1 月施行の改正で名称が「取適法」に変わり、規律も見直されています。資本金 1,000 万円超になったタイミングで、自社が適用対象になっていないか確認してください。
迷ったときの相談先
判断に迷う場合は、社会保険労務士か、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。後から是正を求められるより、先に確認するほうが圧倒的に安く済みます。
会社をつくった人に、最初に届く 1 冊
決算の進め方、PL のつくり方、創業時にやったほうがよい 10 のこと。 設立から 1 か月以内の方へ毎月お届けします。購読は無料で、 あわせてテンプレートの配布と無料ウェビナーもご利用いただけます。
