海外取引の代金回収リスク — 回収できなければ売上ではない
国内の未回収より、海外の未回収ははるかに厄介です。前払い・信用状・貿易保険という 3 つの防御を、取引規模別に使い分けます。
回収できない場合に何が起きるか
海外の取引先が支払わない場合、国内と同じようには回収できません。
- 現地の弁護士を立てる必要があり、費用が高額になる
- 日本の裁判所で勝訴しても、そのままでは現地で強制執行できないことが多い
- 言語と時差の制約で、督促そのものに手間がかかる
- 相手国の法制度・商習慣によっては、実質的に回収不能
回収コストが債権額を上回ることが珍しくありません。だからこそ、取引を始める前の設計がすべてです。
防御の 3 段階
①前払い(T/T 前払い)
最も安全です。代金を受け取ってから出荷します。取引が小さいうち、相手との信頼関係がまだ薄いうちは、これ以外を選ぶ理由がありません。「前払いを断る相手とは取引しない」という線引きは、創業期には合理的です。
全額が難しければ、一部前払い(30〜50%)+残金は船積書類と引き換え、という形もあります。
②信用状(L/C)
買い手の銀行が支払いを保証する仕組みです。書類が条件どおりに揃っていれば、買い手が支払わなくても銀行から代金を受け取れます。取引額が大きい場合の標準的な手段です。
ただし、書類の記載が 1 文字でも条件と違うと支払われない(ディスクレ)という厳格さがあります。慣れるまでは銀行の担当者に相談しながら進めてください。手数料もかかるため、少額取引には向きません。
③貿易保険
日本貿易保険(NEXI)などが提供する、代金回収不能をカバーする保険です。相手の倒産や支払遅延に加え、戦争・内乱・為替制限といったカントリーリスクも対象になります。中小企業向けの簡易な商品もあり、継続的な取引で後払い条件を飲まざるを得ない場合に有効です。
取引前に調べること
- 相手の実在と信用 … 登記情報、所在地、Web サイト、可能なら信用調査会社のレポート。ジェトロの相談窓口でも情報が得られる場合があります
- 契約書の準拠法と紛争解決地 … どの国の法律で、どこで争うか。仲裁条項を入れておくと、判断の執行が国際的にしやすくなります
- 支払通貨と為替 … 円建てにできれば為替リスクを負わずに済みます
条件を緩めるタイミング
取引を続けるうちに、相手から後払いを求められることがあります。判断の目安は次のとおりです。
- 前払いでの取引実績が複数回あるか
- 1 回あたりの金額が、回収不能でも耐えられる範囲か
- 保険や信用状でカバーできるか
条件を緩めるのは、失っても会社が傾かない金額の範囲で、段階的に。売上を伸ばしたい気持ちから一気に与信を広げると、1 件の未回収で創業期の会社は簡単に立ち行かなくなります。
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