入金サイトと支払サイトのずれ — 売上が伸びるほど現金が減る仕組み
先に払って後からもらう構造のまま売上を伸ばすと、増えた売上の分だけ運転資金が必要になります。必要額の計算式と、ずれを縮める交渉の切り口を示します。
「増加運転資金」という落とし穴
受注が増えたのに資金が苦しくなる。創業期によく起きる現象です。原因は単純で、仕入・外注・人件費の支払が、売上の入金より先に来るからです。
必要な運転資金はおおまかに次の式で見積もれます。
必要運転資金 = 売掛金 + 棚卸資産 − 買掛金
月商 500 万円、回収が 2 か月後(売掛金 1,000 万円)、仕入の支払が 1 か月後(買掛金 300 万円)、在庫 200 万円なら、必要運転資金は 900 万円です。売上が 2 倍になれば、この 900 万円も概ね 2 倍になります。成長に合わせて資金を用意しておかないと、受注を取れば取るほど苦しくなります。
ずれを縮める 4 つの打ち手
①回収を早める … 締め支払いサイトの短縮交渉、着手金・前受金の導入、分割請求(月次・マイルストーン)。特に着手金を取れるかどうかは創業期の生命線です。新規の取引では「初回のみ前金」という条件は比較的通ります。
②支払を遅らせる … 仕入先との支払サイト交渉。ただしやりすぎると関係を損ないます。また、下請代金支払遅延等防止法(2026 年 1 月施行の改正で取適法に)やフリーランス新法により、発注者側の支払期日には法的な制限があります。相手が小規模事業者なら、支払を延ばす交渉は法令上できない場合があります。
③在庫を減らす … 発注ロットの見直し、受注生産への切り替え。
④短期の借入枠を用意しておく … 当座貸越や信用金庫の短期継続融資など、必要なときに引ける枠を平時に作っておきます。資金が必要になってから借りるのは、条件も通過率も悪くなります。
大口受注は必ず資金繰りを先に確認する
大きな案件の話が来たとき、利益率だけを見て受けるのは危険です。着手から入金までに必要な現金を計算し、その期間を自社の資金で耐えられるかを確認してください。耐えられないなら、受注条件(着手金、分割請求)を交渉するか、つなぎ資金を先に手当てします。受けてから資金を探すのでは順番が逆です。
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